藤田さんと仲間に

1月28日、星つむぎの村の「フライングプラネタリウム」で、
土砂降りの冷たい雨のなか、「楽しみにしてきたのー!」
と次々に集まって来たのは、 我が家の息子と同じように重い病気や障害をもつ「重心児」 とその家族や兄弟たち。
昨秋にリハビリのために8週間の入院合宿生活を一緒にがんばった 仲間たちです。
みんなで星が見たいから、みんなに声をかけてみたら、 みんな星を見たいと言って、みんな、みんな、 集まっちゃいました。
その数、総勢21人!そして、その日藤田自宅までくるのは難しかった2家族4人もネットを通じて同じ時間に見ました。
この仲間みんなで一緒に星が見たい!
という私たちの願いに応えてくださるべく、 本当にあたたかくてひとりひとりの心に染み渡るプラネタリウムを 届けていただきました。
ちょっと長くなりますが、報告させていただきます。
自宅に集まった21人のうち、子どもたちは11人。
病気で歩けない子が7人と、まだ歩けない赤ちゃんが2人、 9人の子たちがゴロンと横になったら、 もうそれだけで狭い我が家のリビングはいっぱいで、 歩く場所がなくなってしまいました。
仕方がないから残りの歩ける2人も隙間にごろんと寝っ転がって…
そしたら誰が病気で誰が元気か分からない!
境界線がなくなりました。
そんな不思議な光景がなんとも微笑ましくてなんとも心地よく、 みんなでゴロンと寝っ転がっておんなじ天井を眺めていました。

みんなでわいわいごはんを食べて、 真理子さんとビデオ通話でご挨拶をしたら、 いよいよ宇宙に出発です。

ひと家族ずつゆっくり慎重に階段を上がり、 真っ暗な部屋に入ったら…

青い天井には、ひとりひとりの名前がずらり。
「プラネタリウムはじまるよ」
って書いてありました。


もうそれだけで、みんなわぁぁぁと感激のため息が出ました。
平仮名が読めるお姉ちゃんたちは、なんども名前を読み上げて、 みんないるねぇ、みんないるねぇ、と呟いていました。
流れている音楽が優しくて、 はじまる前から胸がいっぱいで涙が溢れてくるような空間でした。
★★★
今回のフラプラは、 とにかく全員が寝っ転がって見るということに、 ちょっとこだわりました。
せまい部屋に大人も子どもも21人全員が寝っ転がるにはどうした らいいかしら?
と、ベッドを解体したり、 布団を敷き詰めたりしながらいろんな角度で寝っ転がって天井の見 え方を研究していると、
これって、一樹(重心児の息子)の姿勢なんだよな、 と夫がぽそりと呟きました。
そうか、「寝たきり」っていうのは、 星を見るための姿だったのか。
私たちはちょっと歩けたり、ちょっと座れたり、 ちょっとあれこれ考えたりできるばっかりに、 自分から星を眺めてみたり望遠鏡を覗き込んでみたりするけれど、
ほんとのほんとの星と人とのあるべき関係は、 こうやって背中をべったり地球に貼り付けて、 降り注ぐ星に体全部を任せて包み込まれることだったのか。と。
星と人との正しい位置関係をいちばんちゃんと知っているのは「 寝たきり」の重心っ子たちだったのです。

大人もみんな寝っ転がって見てくださーい
寝っ転がり方はお子さんに聞いてくださーい
なんて言いながら、
「体全部で星を感じるプロフェッショナル」 7人とその門下生14人は、肩を寄せ合って、 まーるく円を描いて寝っ転がり、 満天の星空と真理子さんの優しい語りに包み込まれたのでした。

ひとりひとりに呼びかけ、語りかけるプラネタリウム。
牡羊座のところで名前を呼んでもらった息子は、「あぃっ!」とお返事をしました。
同じように声を出してお返事をした子、 体にきゅっと力を入れた子、鼓動をどきどきっと昂らせた子、、、 みんな「ここにいるよ!受け取ったよ!」 と体中で伝えているようでした。
重い障害がある息子たちにさえ、 自分に向かって語られていることがちゃあんと伝わるプラネタリウ ム、なんて素敵なんだろうと思いました。
見える子も、見えない子も、しゃべれる子も喋れない子も、 大人も子どもも赤ちゃんも、みんなみんな自分の心と体に満天の星空と優しい語りを焼き付けて 全身で星を感じながら、 すぐ隣に寝転がる愛すべき命の息遣いを感じ合っていたのでした。

今回一緒に星を見た25人の内訳は…
「父」が4人「母」が8人、
「重心児」が9人「きょうだい児」4人。
歩ける人14人、歩けない人11人
うちこれから歩けるだろう人2人、
これからも歩けないだろう人9人
大人12人、子ども13人
男10人、女15人
関西人3人、その他22人
属性は様々で、境界線は何本でもひけるけど、
そんな人たちが全員寝っ転がって星を見たら、
みんな涙が止まらなくて、
みんなむねがいっぱいで、
みんなただただ幸せで、
みんな、いい日だったなぁー
って、心からそんな気持ちになりました。
その思いの前にはどんな境界線も必要ありませんでした。
「ただの私」が25人。
「ひとつの命」が25こ。
いやいや、もはや25この命の境界線さえ必要なくて、
「星空の下、一緒に今を生きてる私たち」がひとつ
それでいいんじゃないかな、と、そんな気持ちになりました。
ひとつひとつみんなそれぞれ違う輝きをもった星たちが、 想像力の力を借りてつながり結びつき「星座」になったように、
歩けない息子も歩ける私も、夫も兄弟もお友達も、
こうして出会った小さな輝きどうしが、 支え合い繋がり合いながら、 ひとつの今を生きる集まりになれたとき、
「私たち」が歩けることにはそんなに大きな価値はなく、
「この子たち」が歩けないことにもそんなに大きな意味もなく、
そんなことよりただただ今こうして一緒に星を見るそのことが、 とてつもなく大きな幸せなことのように思えてきたのでした。
★★★
村のイベントのような素敵なワークショップはできないけれど、 星を見る前に、みんなでなにかワクワクすることやりたいなぁ
ということで、ウェルカムボードでお出迎え。
子どもたちが通園でやってるシール貼りの要領で、
自分の顔のついたお星さまを、
めいめい自分の好きな場所に貼りました。


空から宙へ。
「今」を積み重ねるひとりひとりの命の輝きは、 出会いと想像力の力によって、 ともにつながりともに輝く大きな未来へ。
そんな思いを込めたウェルカムボードには、 真理子さんと跡部さんの星も一緒につながり輝いていただきました 。
眺めるたびにあの幸せな夜を思い出し、 また明日を生きる力を与えてくれる宝物です。


そして「星に願いを…」 という名のあの日のメンバーのグループラインは、今でもまだ、「 またみんなで星を見ようね!」 というメッセージで賑わっています。
今日を大好きな人と一緒に過ごす幸せと未来を夢見る幸せ。
そんな幸せを天井いっぱいに届けてくださって、
そしてその天井の向こうにはいつもいつもたくさんの星たちが輝い ていることを思い出させてくださって、
本当に言葉にならない感謝の気持ちでいっぱいです。
ありがとうございました。